M-1最終決戦の3組になんだかグッときた話

ものすごくまとまりの悪いM-1雑感。




大井競馬場の寒空のもと、最終決戦に上がった3組を見ながら私が無意識に何度も口にしていたのは「やっぱりか」、「よかった〜」、そして「ああ、そうか」という3つの言葉でした。
「やっぱりか」というのは、M-1の決勝メンバーが発表されたときに優勝の絵が浮かんだのは笑い飯とパンブーしかいなかったし、決勝予想をしていたときに私の中で筆頭だった3組がきっちり残ってきたことに対する納得の気持ちと、「どうせこうなるんだったらさあ…」というちょっぴりの不満の気持ちだったんだと思います。
「よかった〜」というのは、笑い飯が燦然と、圧倒的な輝きでもって過去の自分たちを超えるようなネタを叩きつけてきたことに対する感嘆の気持ちと、ずっと評価されてこなかった、タイミングや環境にあまり恵まれてこなかった実力者のパンクブーブーがコケることなくきっちりと美しいネタを披露したことに対しての祝福の気持ち、そしてノンスタが前王者というポジションとしての及第点であろうポイントを突破したことに対する安堵の気持ちでした。
そんで「ああ、そうか」というのは…なんかこう、私の眼にはこの3組が、最終決戦でものすごく自分たちの好きなようにやりたいことをやっていたように見えたのですよね。特に笑い飯NON STYLEは、正反対のアプローチで自分たちのやりたいことはこうなんだ、と示していたように思えて「ああ、そうか、みんなやりたいことをやるんだね、やっているんだね」となんだか目からウロコが落ちたような気分になったのです。
私は今年初めてM-1を予選からがっつり見て、その中でどうしても「M-1的なネタとは」「勝つためには」みたいな考えや見方をしてしまっていたのですが、実際その最後の舞台に立ってる彼らはそういうのを取っ払ったネタで挑んでいるような気がして。そしてなんだかそれがすげえカッコよく見えてしまったのです。
笑い飯に関しては、もう誰が何をどう考えたって「チンポジ」を連呼するなんてアホすぎるネタはNGで、優勝は無理!ってのは火を見るより明らかだったし(w、NON STYLEに関してはネタ始まった瞬間「うっそ!?」と叫んでしまったくらい、私的に最も「M-1的でない」「玄人ウケしないであろう」という感想を持っていた峰打ちネタだったので*1、まあどっちのコンビもそれがやりたいネタだったんだろうな〜と。笑い飯は審査員でも客席でもないところに向けて自分たちがおもしろいと思うことをやっていたという印象、NON STYLEはプロやコアなお笑いファンではなく客席やテレビの向こうの…なんつったらいいんだろう、いわゆる「普通のお客さん」に向けてやっていたような印象を受けました。まあ終わったとき大井競馬場ではどっちもだいぶどよめいてたけどねw ノンスタは「あのネタの感じか」「短くない?」「短かったよね」というどよめき、笑い飯は「それでオチかよ!」「チ○ポジて!w」っていう…KOCでいうとロッチとモンエンの2本目を合わせたかのような失笑混じりのざわざわでしたww いやもー笑い飯アホすぎてカッコイイよw
そんなだったもんで、どっちも評価は気にしないでこれがやりたいんだ!って全身で主張しているように見えたのに、それでもやっぱりどうも2組とも本気で優勝したかったらしいというのがまた面白いなと思いましたね。いや当たり前なんだけどさ。でも、笑い飯は8年も連続で決勝出てて、ノンスタは去年M-1用に作り上げたネタで優勝してて、どっちもどういうものがM-1的なのか、みたいなのは絶対知ってるはずなのにね。2本目のネタがないっつったって、笑い飯は去年2本目用に用意してたネタでも全然いいわけだし、ノンスタはそれこそ一昨年までやってたイキリネタの極上ネタを出したって別にかまわないわけで。でも今年用意した自分たちのやりたいネタをやって玉砕する、っつーのはなんだかある種清々しいなとw
そういうわけで、笑い飯NON STYLEも、そしてもちろんパンクブーブーも、ブレないでやりたいようにやってる姿がすばらしいなーと勝手に思って、なんだか最後の3組を見てグッときたのでありました。まあ、ただ私が最後その3組のネタを見ているときに気付いただけで、たぶん本当はどのコンビもそうなんだろうと思いますけどね。



あとは、なんだか今回の最終決戦は本当に根っから漫才師、今日も明日も明後日も10年後もずっと漫才師、って感じの人たちが残っていたというのがなんだか嬉しいな〜と思いました。やっぱりM-1とった人にはずっと漫才続けて欲しいなあと思いますから。そういう意味ではナイツが最終決戦残ってもよかったな。
そしてたぶん、準決勝で涙出るくらい笑わされたのに、どっちかと言ったら断然好きなコンビなのに、南海キャンディーズが決勝行ったと決まった時に全然優勝とか3位以内に入ってる絵が浮かばなかったし、そうなって欲しいともあまり思わなかったのはそういう理由なんだろうなーと思います。ずっとネタをやり続けてくれるかどうかがグラグラしていては、見ているこっちの意識は「漫才師というよりタレント」ってなってしまうんじゃないかな。だから、きっと「フラガール」の話を出されて若干動揺してちゃまずいんだよ、山ちゃんw 山ちゃんはとっても才能ある人だと思うし、コメントでの「思っていた以上に…いい審査員でしたね」「しずちゃん上からはまずいよ!」っていうやりとりなんかはやっぱり南海キャンディーズってコンビとして本当に魅力的だなあと思わされたので*2、一生ネタやります!漫才やります!っていう覚悟でコンビ仕事も舞台も増やしたら全然まだまだ面白いものが作れると思うのですよね。だからそういう気持ちで来年以降も挑戦するなら、頑張ってね!と思います。そのときは応援するよ!




最後にちょっとおセンチな?感じの話。いや今までのくだりも大概だけどw
えーと、家に帰ってから録画したテレビの方を見返してみて、番組としてのM-1をすごい!すてき!と思わされたのは音楽でありました。煽りVTRは毎年秀逸で、キャッチコピーは…素敵だったりそうでなかったりで*3楽しみにしていたのですけども、今年はその煽りVについているBGMがなんか妙に示唆に富んでいた気がしてすごく興味深かったです。
生で見ていたときには「お、パンブーBON JOVIじゃん!イイ曲つけてもらいよってー!うっかりカッコよく見えるぞ!」とキャッキャしてたくらいだったんですが、帰ってきてしっかり見たらなんだかほんとちょっとハマっているというか、歌詞を見るとなんかこう…いいんですよー。ちょっとドキドキしてしまったので決勝3組のBGMから、それぞれにちょっとオーバーラップしたところだけ部分的に引用。ノンスタは今年は敗者復活だったため煽りVがないんで、去年のVTRで使われてた曲ね。対訳は私の拙い英語力を駆使したざっくりした意訳なので違うとこあったら教えてください><

笑い飯:Viva La Vida/Coldplay

Listen as the crowd would sing / "Now the old king is dead! Long live the king!"
群衆の歌声が耳を打つ/『さあ、古き王は死んだ!新王万歳!』

Revolutionaries wait / For my head on a silver plate / Just a puppet on a lonely string / Oh who would ever want to be king?
革命家たちは待ちわびる/銀盆に載せられた私の首を/たった一本の糸で吊り下げられた操り人形にすぎないのに/ああ、誰が王になどなりたいというのか

このあたりのくだりにおっとー、と思ったのですけども、でもこれはほんとは全てを失った王様の物語を歌った歌なんですよね。聖書やなんかに出てくる言葉がたくさん使われていて、宗教的な匂いの濃い歌です。でもそれもなんとなし侍と坊さんみたいな、求道者ちっくな笑い飯にはちょっと合ってるかもね。哲夫さん趣味(日課?)写経らしいしw



パンクブーブー:IT'S MY LIFE/BON JOVI

It's my life / It's now or never / I ain't gonna live forever / I just want to live while I'm alive
これが俺の人生/今しかないんだ/永遠に生きられるわけじゃないから/命ある限り精一杯生きたいだけ

I did it my way / I just wanna live while I'm alive / It's my life
自分のやりたいようにやってきた/俺はただ命ある限り生きていたいだけなんだ/それが俺の人生

Tomorrow's getting harder make no mistake / Luck ain't even lucky / Got to make your own breaks
日ごとにきつくなっていっても間違っちゃいけない/全ての運が幸運とは限らなくて/チャンスは自分の手で掴まなくちゃいけないんだ

Now or Neverなチャンスをきちんと掴んだ彼らに拍手、でしょうかね。いやほんとパンクブーブーおめでとーございます!1本目のネタが陶芸家じゃなかった時点であ、これは最終上がったら優勝かな〜と思ってました。超順当だったと思います。いつ見ても本当に上手で面白い人たちという印象そのままに、きちんと評価されて本当によかった、うん。


NON STYLE:Rock'N'Roll Star/Oasis

I live my life in the city / There's no easy way out / The day's moving just too fast for me
都会で暮らしてるんだ/そこには簡単な逃げ道はなくて/日々の動きは忙しすぎる

去年の煽りVが「ストリート漫才からbaseへ」「トントン拍子に出世、賞レースで勝ちまくるもM-1では結果が出せない」「東京に出てきてゼロからのスタート」という作りだったので上記の歌詞部分が使われていたんじゃないかなと思うんですが、実は誰かさんを彷彿とさせて面白いのはサビの歌詞の方。

I live my life for the stars to shine / The people say it's just a waste of time / When they said I should feed my head / That to me was just a day in bed
俺は輝く星のために生きている/みんなはそんなの時間の無駄だって/もっとよく考えろって言う/だけどそんなの俺にとったら退屈すぎるんだ

In my mind my dreams are real / Now you concerned about the way i feel / Tonight I'm a rock n roll star
頭の中じゃ俺の夢はリアルで/ほら、君も俺が何を考えてるのか気になってきただろ/今夜の俺はロックンロール・スターなんだよ

……デイ様の歌?
でい様といえば、今回はM-1の大舞台で井上さんがガンガンイキリぶっこんでくれたので見ていて非常に爽快でした。イライラしたのに爽快なこの不思議!w 何なん?年末年始の番組でそんなにあのキャラいじられたん?それで吹っ切れたとしか思えないキャラ付けガッチリのパフォーマンスでしたね。いやいやぐれーと。私的にはネタで結果出したこと以上に、イキリを思いっきり出してたことの方がうれしかったかもしれないくらいでしたw
でもやっぱりイキリ芸を輝かすため、「NON STYLEとして」面白くするためには、石田さんが突っ込む・貶す・解説するのが不可欠だと思ったので、こうなると井上さんよりも石田さんの頑張りが必要なんじゃないかなーと思ったり。アイアンハートでアシンメトリーな彼はおそらくやれと言われればいつでもどこでもナチュラルにイキってくれると思うんで…。ボケとしては引いて相方いじりに回るのは不本意かもですけど、そこはうまくコントロールしてやって欲しいなあ〜と思いました。視聴者の気持ちの代弁者になってイライラをスカッと笑いに昇華させてくださいな〜
ところでもしストレートインしてたらノンスタのVのBGMはなんだったんですかねえ…QUEENの"We Are The Champions"とかか?やっぱチャンピオンだし…あ、でももしアリスの方だったら笑ったなw



ついでにわかる範囲で他のファイナリストVのBGM。モンエンも追記

ナイツ:A Hard Day's Night/Original;Beatles, covered by SUGARCULT 東京ダイナマイト:Born To Be Wild/Steppenwolf ハリセンボン:GirlFriend/Orifinal;Avril Lavigne, covered by Zebrahead ハライチ:青春/THE HIGH-LOWS モンスターエンジン:New Divide/Linkin Park

南キャンはちょっと解りませんでした。すみません。絶対聞いたことある気がするんだがわからん…どなたか知ってる人いたら教えてください〜。東ダイのもカッコよかったし、似合ってたな。アウトローな感じが彼らっぽいよね。
こういうので流す音楽がすごく気になってしまう気質の私にはたまらんかったです。来年もこんな感じに有名どころの曲を使って煽りV作ってくれたらいいなー。確か去年の煽りはインスト曲の人たちもいたはずなんでね。



そんな感じのもろもろ感じたことでした。敗者復活と本編のネタ感想はまたあとでー。
まあしかし松本さんじゃないけど、M-1ってのは実にいいソフトですな。KOCもいいソフトだと思ったけれど、M-1てやっぱりすごいね。うまく言葉にできないけど、すごいね。何かしらの説得力があって、どんな展開でもストンと物語として成立して、多様に解釈できるその感じが、なんかやっぱすごいんだね、と思いました。

*1:まあこれは200%私の主観にすぎませんけども…どうも多少感想まわってみると全体的にこっちのが好評なようだし

*2:そしてそれを見ながら「あ、ノンスタに足りないのはそれ!石田さん、山ちゃんくらい拾ってあげて!」とも思わされたのでw

*3:なんか今年ちょっとイマイチだったよねw